瀬宮の球拾いブログ

エンジニアだったはずが、みんなにヘイストかける方がチームに貢献できた男のブログ

カスタマージャーニーマップの作り方

会社でカスタマージャーニーの話が出ていたのでちょっとここに書く。
カスタマージャーニーについて悩んでいた彼がここを見るかもしれないし見ないかもしれない。
もし見たのなら助けになればいいと思う。
あくまで私の一見解であるので特に勧めたりはしない。
また一見解であるので、真に受けて痛い目みても責任は取れない。

本題

さて、私はカスタマージャーニーとはUX設計の一手法だと思っている。

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ここにAirBnbのカスタマージャーニーの図があるんだが、これはわかりやすい。
ただしわかっている人間にとっては。
わかっていない人間にとっては非常に誤解しやすい図だと思っている。

ドツボにはまるケース

わかっていない人間は手続き的にユーザーの動作を列挙しようとしてドツボにハマる。
つまり行動を列挙し、それにともなう感情を付け加え、最後に書き連ねた内容を総括して「結局ユーザーは何をしたい?」を書く。
順番として 行動 > 感情 > 目的の順番でまとめようとする。そしてドツボにはまる。

ドツボにはまらないケース

順番として 目的 > 感情 > 行動の順番でまとめる。話は結論から始まる。論文を書くときに Conclusion comes first って習うでしょう?

AirBnbがシンプルなのはあれを利用したい人間にとっては(少なくとも初回は)楽天トラベルやじゃらんと同じサービスだ。
つまり、旅をしたいときに、金を払って泊めてくれる宿泊先を探すサービス。
目的が明確。

どうフェーズに分解するか?

ユーザーは旅行先での宿泊先を探したいのだ
より分解するなら

  • 宿泊先を1つに絞りたい
  • 宿泊先オーナーと交渉し契約を成立させたい
  • 当日に宿泊先に移動したい
  • 利用後に宿泊先を評価したい

となり、それぞれにモチベーションと不安が存在する。
それぞれをフェーズとして分解する

ここで注意すべきなのは最後の「利用後に宿泊先を評価したい」はユーザーが先天的に持ち得る感情ではないため、後天的に動機付けすることで行わせる必要がある。

カスタマージャーニーではフェーズごとに何を書く?

モチベーション実現(あるいは不安解消)に伴うユーザーの感情を列挙し、感情に伴うそれぞれの行動を列挙する

感情とは?

宿泊先を選定するにあたり利用者が抱くであろう感情を列挙する

  • 宿はどんな感じの部屋?(興味)
  • 交通利便性は?(興味)
  • お値段は?(興味)
  • 宿は写真通りの快適そうな場所か?(不安)
  • オーナーは悪党ではないか?(不安)

感情欄に上の感情を書き過度に下がりすぎないようにする
過度に下がると離脱するから。

行動とは?

上記の感情を解決するためのもの。
インサイトにアバウトな解決の方針を書く。
インサイトの方針に沿って実装方針を後で決めることにする(別にカスタマージャーニーマップ内で決める必要はない)
AirBnbで実装された内容はこんな感じ。

  • 部屋や建物の写真の掲載
  • 地図の表示
  • 総額及び内訳表示の終え弾表
  • レビューの掲載、貸切かについての部屋タイプ表示
  • オーナーの顔写真と素性掲載

ところで上にあるペルソナってなんぞ

ペルソナはユーザーの代表的な属性を書いたもの。
モチベーション、あるいは感情のレベルで「同じ」と判断できるものについてはまとめる。
「同じではないもの」についてはまとめずにペルソナを分ける。

アンチパターン

年齢を10代、20代、30代、40代。性別を男性、女性。家族を独身、既婚でマトリックス化しようとする。
それは目的や感情に影響するか?しないなら無駄だ。いますぐやめろ。

分けるって具体的には

例えば移動手段を選ぶとき
「時間と体力はあるがお金のない学生」は安いがしんどい深夜バスを好む
「時間と体力はないがお金はある老夫婦」は高くても快適な飛行機や新幹線を好む。

AirBnb的に考えるなら

「初めての海外旅行の日本人」は比較的値段が高くても表通りに面した、親切なオーナーの治安が良く清潔な宿泊先を好むだろう
「旅慣れた外国人のバックパッカー」ならば裏通りの、尼崎や西成みたいな比較的下町(婉曲的な表現)の安いドヤ宿や簡易宿泊所のような場所でもよいだろう。

独身男性なら相部屋二段ベッドのシェアでもよいだろうが、小さい子供連れのファミリーなら一戸建て貸切の宿泊先を好むだろう。

このように大きいレベルの目的は同じでも求めているものが違う、感情が異なる、あるいは対象選定の評価基準が異なるユーザーはペルソナを分けたほうがいい。
これらを一緒にして扱うことは、どちらに対しても親切でないごちゃごちゃとしたサービスをつくることにつながる。

ペルソナは適切な分割を必要とするが、どの粒度で分割するかについてはケースバイケースである。
最初は3パターンくらいで作るのがよいかもしれない。
ただし、ヤフオクやメルカリみたいなサイトを分析するならなら「よい買い手」と「よい売り手」のような「ユーザーの最小構成」は作っておく必要がある。

カスタマージャーニーマップとはなにか?

ユーザーは大目的においては共通である。(AirBnbなら旅をしたいときに、金を払って泊めてくれる宿泊先を探す)
しかしペルソナ単位で実際に手に入れたいもの、満たしたい感情や求めている機能は異なる。

ペルソナごとに以下のことを行うことが目的である。

  • ユーザーの行動段階に即してフェーズ分けし、ユーザーの段階単位の小目的を定義することこと
  • ユーザーの感情に沿って行動を定義することでユーザーエクスペリエンスを設計すること
  • サービスには必要だが、本来ユーザーが取りたがらない行動を明確化させ、動機付けの設計を行わせること

またそれらを行うことで以下の利益がある

  • UXの設計が行えることで高いユーザービリティを確保できる
  • ユーザーの離脱動機が見えるためKPIの設定がしやすい
  • ユーザー動線が明確なため、動線単位で設計変更がしやすい
  • 離脱率を低下させる

これだけは覚えておいてください

カスタマージャーニーマップ=ユーザーの求めるものに合わせてUXを設計するための手法。