瀬宮の球拾いブログ

エンジニアだったはずが、みんなにヘイストかける方がチームに貢献できた男のブログ

プロダクトオーナーの異常な雑用 または私は如何にしてプログラムするのを止めて雑用をするようになったか

タイトルについて

映画のパロディです。
ジョニーの凱旋が流れるシーンが好きです。

私の担当

チームにおける私の配置は

  • プロダクトオーナー
  • チーフエンジニア
  • 雑用係

の3つです

経緯

私は業務外でゲーム開発チームを運営しています。
役割分担は「システム」「シナリオ」「デザイン」の3人でした。
ひとまず開発が落ち着いた段階で、製品そのものはゲーム性を備えたので、販売を強化しようということになりました。
すなわち、販売強化に関わるタスクを誰かが受け持つ必要がありました。新しく人とかまだ雇えないし。
この時点でデザインさんは投入可能時間と要求作業量が均衡しており、新しいタスクは振れません。
シナリオとシステム、どちらが作業したほうがゲームのプロダクト価値をあげられるか、と考えた時、データ分析から、明らかにシナリオ量のほうがユーザーに訴求することが明らかでした。また、ゲームシステム開発はひと段落し、新たにシナリオスクリプトを投入すればほぼ追加開発がなくてもゲームリリースが回る状態になっており、システムのタスク需要が大きくなかった、という判断から、システム担当がシステム開発の時間を削り、販売強化にまつわるタスクを受け持ちました。

販売強化is何

大きくあげると「マーケティング」「販売宣伝」「カスタマーサポート」「データ分析」「売上集計」「渉外ぜんぶ」に分化されます。
あとでイラスト絵などの「外注管理」も加わりました。

そのあとも「いま、誰の作業時間を"本業"に当てれば最もプロダクト価値が上がるか」は常にリリース単位で検査の対象となりました。結果は上下するものの、「最も価値に寄与しない」最下位と判断されたのは常にシステム担当でした。
こればかりは同じゲームエンジンを使いまわすというプロダクト戦略の都合上やむをえません。
そのため、私は常に「雑用係」を担当しました。

雑用と便宜上言っていますが、こうして並べると分かる通り、製品開発以外の「超重要な業務」です。ないとプロダクトとして機能しません。作って終わりではありませんから。ですので、私もかなり真面目に取り組みました。
特に、マーケティングと販売宣伝には注力し、1年間で売上8倍の売上を達成しました。

担当の基本

1人に複数の役割を振ってもいいですが、責任を持つ役割を同列の2人に振ってはなりません。常識です。コーラを飲んだらゲップが出るレベルの。(エッセンシャルスクラムにそう書いてあった)
そのため、雑用係は輪番制や共同担当制をしかず、常に私が受け持ってきました。

担当制

ながらく担当として一人に担当すると「強い責任感」と「ノウハウの蓄積」による高いパフォーマンスが期待できます。逆に「どうでもいい仕事」で邪魔をしてしまうと「自分は軽んじられている」と感じて"本業"にも"副業"にも責任感を感じられなくなります(出典:ピープルウェア)
メンバーを専門職として尊重し、"本業"に高い生産性を出させるためには、誰かが"落穂拾い"を引き受ける必要があります。今回の場合はそれがプロダクトオーナーである私の仕事でした。

自分が担当したことによる利益

その甲斐あって、2つの利益が得られました。
1つは他の担当を雑用から解放したことで、プロダクト価値に寄与するシナリオやデザインの生産性が常に上がり続けたこと。
もう1つは、プロダクトオーナーが雑用を行ったことでユーザーのニーズや考えていること、販売媒体が我々に期待すること、売れ線の把握などがそのまますぐにプロダクト戦略に反映されたことです。

インメモリ理論

コンピューターサイエンスのセオリーとして、記憶媒体のI/Oを行わず、高速なメモリ上のみのデータを使って計算を行うとスループットが向上します。
同様に担当間で情報をやりとりするより、一人の人間が別の担当として仕入れたノウハウを別の担当としてふるまうときに利用することで、高いスループットと強力なシナジー効果が得られました。今回のケースで言えば、「カスタマーサポートや渉外担当、データ担当」という外向きの担当とプロダクトオーナーを兼任していた点です。
もっというならプロダクトオーナーがシステム担当も兼ねていたので、システム側のギミック実装が極めてスムーズでした。

プロダクトオーナー+エンジニア+雑用係

この組み合わせが機能したのは、私が比較的企画よりのエンジニアだったこと(逆に言うとガチガチの技術よりではない)と、なんでも一通りこなせる「便利屋」的なスキルを備えていたことが影響していると思います。
経験としては楽しかったですし、新規事業とかやるときにはまたこういうことをやってもいいな、と思いました。

データを見る限り、私が雑用することでチーム全体のパフォーマンスは向上しています。
「誰の本業がプロダクト価値に寄与しているか?」は計測していてよかったと思いました。

悲しい現実

上ではかっこいいことを言っていますが、なにか「必要なタスク」があるとわかったとして、みんな自分の仕事に全力投球しているので、新しいタスク引き受ける余裕なんてないんですよ。
雑用振れるような新卒メンバーがいるのは大きい企業だけなんです。
ということは、そのタスクは誰かが(主に自分)引き受けなければいけなくて、そのためには本来予定にあったタスクを外すか、あるいはその新しく湧いたタスクを後回しにするかの二択をせまられるわけです。
その現実から目をそらして、「無理してでも両方やろう」とか言えないわけですよ。特にある程度以上のタスクサイズなら。
そこで腹をくくって現実を受け入れて、計画修正するのがプロダクトオーナーの仕事だと私は思ってます。

結論

プロダクトオーナーならチームのために雑用とかやっても楽しいです。結果が出ている場合は特に。 f:id:ShinSemiya:20151207231948j:plain