コミケの実像をデータ解析から読み解こうとした-コミケ35周年調査報告から読み解く-
最近の日常
最近、データ解析にはまった。
実践してみたところ「男女比は50%である」「身長が高い人ほど体重が大きい傾向にある」というレベルの大変有益()な解析結果が得られ、真剣に反省する必要に駆られた。
前書き
コミケのユーザー層をサービスに取り込めないかという話が会社で出た。
ちょっと調べてみたが、なかなか面白かったので分析した結果をここにまとめる。
調査結果から読み取れる内容からは、興味深い結果がわかるとともにデータ解析でよくある「誤った解析結果」を出す条件が揃っていてとてもおもしろい。
会社でこの話をしようとしたがエンジニアがコードがでない話するのも肩身がせまいのでここで書く
種本
コミックマーケット35周年調査報告
注意:これは6年前の調査報告書
昨年の調査報告書も持っているが、裏取りの都合から一般公開されている方が良いと考えこちらを選んだ。
読み解くと?
アンケート以外で公表されていること
コミックマーケットとは( コミックマーケット - Wikipedia引用)
コミックマーケット(Comic Market、通称:コミケあるいはコミケット)とはコミックマーケット準備会が主催する世界最大規模の同人誌即売会。
- 春夏に2回開催
- 東京ビッグサイトを全館貸し切る唯一のイベント
- 3日間で合計57万人の来場者
要するに同人業界最大のイベントにして、日本有数のイベント
アンケートで公表されていることから気になっているところだけ
参加者
サークル参加者は男女比 1:2
一般参加者は男女比 2:1
地域性?
関東が64%、ついで東海が12%。
大人口地域である近畿は13%。
地域性が高いと言える
すなわち、全国区のイベントというよりは関東ローカルの大規模イベントといった様相を示す。
サークルの構成員から見る、製作者のイメージ
サークルの参加者は1〜2人が男性だと80%弱、女性は90%強。
ほぼ企画〜製作〜販売をクリエーターが単独で行っているケースが多い
大半が二次創作であり、「原作の上に乗っている」という点を除けば企画〜製造〜販売まで1人で担当していることになり、極めて独立色の高い作家が多い。
クライアントから依頼を受け、納品して報酬を得るタイプの作家とはマインドセットが大きく異なっている
頒布傾向
「頒布物は何主体か?」という質問に対し
男女別で傾向が大きく異なる
最主力は漫画主体。男性で58%。女性で70%。
男性は漫画58% + イラスト24% + 小説12%
女性は漫画70% + イラスト07% + 小説32%
でいずれもこれらが主力を占める
男性の評論系主体11%とグッズ主体(男女10%程度)を除けば、残りは1%程度。
部数
総頒布部数は1,000部以下が60%
総頒布部数はイベント合計で 900万部
商業誌での発表希望
サークル参加者で全体で16%
300部〜3,000部のボリュームゾーンでも「強く希望する」は18~25%。
商業誌への転身作家の多さとは別に、商業誌での掲載希望の強さは大きくはないことがうかがえる
収益
年間収支は4割弱が黒字
7割が赤字、半数以上が5万未満の赤字、残り15%は5万以上の赤字
消費額
コミケでは企業サイドと同人サイド(販売主が個人)があるが、ここで扱うのは同人サイドのみ
男性平均は¥28,400
女性平均は¥21,865
母数の男女比を考慮して¥25,000強くらいが平均と思われる
参加日数
全開催会期3日中、平均すると2日弱参加する
取扱高
述べ57万人かつ平均2日弱参加のためユニークユーザーは約30万人弱
30万人弱が¥25k強を消費するため、同人サイドだけでも約75億円の取扱高、市場規模がある。
企業サイドも合わせれば1回あたり100億円の取扱があることになる。
購買傾向
男女ごとに購買傾向は大きく異なる
「ジャンルごとの作品を購入したか」という設問に対し
男性は漫画(88.4%)、イラスト(62.8%)に集中している。
女性は漫画(96.6%)、イラスト(43.0%)、小説(73.4%)に集中している
男性は「小説(38.4%)」は女性ほど買わない。
男性は「論評、音楽CD、ゲーム、写真集」は30~40%で多くはないがある程度の層が買っている。
女性は「論評、音楽CD、ゲーム、写真集(全て20%以下)」はほぼ買わない。
グッズは集計対象に入っていない。誤差レベルということか。
ほかに?
業界人
サークル参加者側に(いわゆる)業界関係者は男性で10%、女性で7%存在する
さてさて
ここまでよんでどう思われました?
アンケートは嘘をつく
あんちべさんだったと思うのですが「データ解析において良い回答には良い設問が必要だ」といいました。
このアンケートが抱えている問題
営利目的のプロジェクトの参考資料としてこの調査報告を参考資料とした過去の実例を知っています。
上のアンケート結果は実態調査のため、2つの問題を抱えています。
一つは任意回答であることです。
ロイヤリティの高い人間ほど回答率が高く、逆は低いため、全体集団から回答した集団が偏っているせいで結果が上に出ます。
もう一つが実態調査という都合上、回答者の属性を「男性、女性」「サークル参加者、一般参加者、スタッフ参加者」という極めておおざっぱな括りになっています。
そのため、「イベントの地域性が高い」というイベント特性への誘導や
同人イベントの市場理解への「小説の善戦」「平均単価の高さ」「収益性の構造」「頒布部数の分布」を見誤らせる数値が隠れています
調査結果から有意な結論を読み取るために
1つは母集団をうまく選定し、よい設問を設定することです。
もう1つは既存の資料から読み取る際に修正をかけ、誤った結論を読み取らないようにすることです。
いずれもドメインへの理解と知識、あるいは経験を必要とします。
結論
この調査結果を真に受けてプロジェクトを始めるのは死亡フラグなのでやめたほうがいいと考える次第であります。