瀬宮の球拾いブログ

エンジニアだったはずが、みんなにヘイストかける方がチームに貢献できた男のブログ

社内で考えていた僕の考えた最強のサービス

最近ピクシブ社で仕事でやっていたことはpixivサービスのPHP7対応などの地味〜な仕事なのですが
じゃあプロダクトマネージャーっぽいこと何もしていなかったんですか?
って言われて地味にショックだったので社内で提案した事業一覧です。

エンジニアでも事業について積極的に提言していいよ、というのがピクシブのウリだったんですが
最近の流れとして多数の新規サービスを立ち上げるために開発リソースが払底気味で、提言は新規サービスよりも任されたプロジェクトを高速化できる分野についてのものしか好まれませんでした。
要するに、ビジネスのことはビジネス職が考えるので、お前らは技術的課題やオンスケで開発することにだけ集中しろよって言われてました。

提言内容はどれも却下されたやつなのと、偉い人的には「こんなもの作ったって儲からないよ」って言われたので、社外秘の営業機密には当たらないだろうという判断です。

【pixivにおける再帰間隔と定着率の向上】

はいめっちゃ地味なやつ。
地味すぎて却下されました。
有料会員数増加に向けた施策です。
ソシャゲ界隈だと割と常識なんですが、ユーザーのログイン再帰間隔と平均滞在時間が課金額と相関しています。
そのためユーザーのログイン再帰間隔をあげようとします。メジャーな施策はログインボーナスです。
そこで「ユーザー指定の特定のキーワードやジャンルの作品で」「一週間以内に投稿されたもので」「ブクマや評価などが一定の足切りラインを突破した」作品のみで構成されたタイムラインをつくり、それを見せようとしていました。
感じとしてはいにしえのふたばチャンネルの二次裏が近いと思います。
無料ユーザーだと人気順検索ができないため、ログインしなければ「一週間以内」の枠から外れて人気作品を見逃すことになります。pixivの投稿数は非常に多く、投稿作品全ての中からタグで絞ったとしても人気作品をすべて見るのは大変だからです。
逆に「一週間以内」の枠の中でログインし続ければ人気作品を見逃しづらくなります。
一昔前、学校であった「みんな見ているテレビ番組を自分だけ見逃す」、に近い現象が起き得ないよう、仲間内の話題に乗り遅れぬよう、ユーザーは話題の作品を見逃さないよう頻繁にログインさせようとすることが狙いです。
また頻繁なログインによる閲覧はサービス中におけるお気に入りやフォローなどの「サービス内資産」を増加させます。「タイムラインの人気作品へのキャッチアップ」がどこかで限界に達しても、その資産を捨てることをもったいないと感じるユーザーは、課金することで有料課金機能を使って「人気作品だけのタイムラインへの、タイムシフトによるアクセス権」を手にいれることを狙います。
事実上のアップセルなのでこれが狙いの一つです。
またpixivは広告収入が主体なので、アップセルせずとも頻繁なアクセスは広告収入の増加につながります。

【ファンクラブ式パトロンサービス】

国内だとfantiaやentyが行っているパトロンサービスです。
月額課金によってユーザーはクリエイターを支援します。
他サービスとの差異点は、最低額課金に対する課金ユーザーが得る対価として「ステッカー」を用意する点です。
ステッカーは原価が低く、またクリエイター側が用意しなければならないものは既存作品をデザイン流用したイラストのみであり作成負荷が低く、またユーザーとしては課金の対価をファングッズとして得やすい点です。
つまりクリエイター側はファンへの対価になるサービス提供に忙殺されるという既存サービスにありがちなデメリットをつぶしやすいです。
事実上割高な買い物ではありますが、物品に対する月額販売サービスと言えるのがポイントです。
またアイドルのファンクラブを見るとわかるように「一度のみの販売で、古参ファンのみが持ち得る古参の証」はファンにとってのステータスです。
原則同じデザインの再販がないステッカーを作ることで「俺はこのクリエイターをxx年間支援してきた。にわかとは違う」という一種の優越感をファンに与えやすく、また「今ファンになっておかないと、あるデザインのステッカーを買い逃す」というタイムリミット設定型の買い煽りができます。

ターゲットとしていた市場だと一人の作家に対する熱心なファンの課金額は年額2,000~3,000円がボリュームゾーンでした。MAXでも6,000 ~8,000円を超えると急速にしぼんでいきます。
この層に対して更にプラスαの課金を求める場合対価になるサービスの質が求められます。
しかしそうなると「熱心なファン」の中の更に「高課金可能な一部のファン」がターゲットになります。
・彼らは数が少なく、課金額を非常に高く設定するに足るサービスを設定するか
・あるいは安価な課金を満足させる省省労力のサービスを設定するかの二択です。
トータルで見ると収益額の低い少数のファンを満足させるために、マスターゲットの本業より大きな労力を払うことは本末転倒です。
ステッカーの場合その年に出した代表的作品の表紙絵を流用することを前提としていました。
その場合
・流用なので省労力
・表紙絵から刊行時期がわかるため、いつ頃からファンかが分かる
 ・ファンコミュニティにおいて重要な古参ファンアピールになる
 ・二度と手に入らない点がはっきりする
というメリットと訴求点があります。
また安価で簡易なステッカーをフックとして、そこから高額かつ少数のファンクラブ限定直販でアップセルを稼ぐというプランでした。
ファンクラブにおける古参ファンアピールが有効なのは既存のアイドルのファンクラブ制度を参考にしました。

ただし当時はBOOTHにおいてBOOSTという、「購入時にさらに支払額を任意に増やすことでクリエイター支援ができる」というシステムでfantiaやentyに対抗するという計画だったためサービスの重複を嫌ってボツりました。
ターゲットもユースケースも違うので重複はしないと考えたのですが経営判断なので覆せず、です。
(追記:pixiv fanboxという月額500円のサービスが後に出たようです。)